2017.10.19
お知らせ
平成29年10月8日~9日に「第50回 日本薬剤師会学術大会」に参加しました。
記念すべき第50回に、3つのポスター発表ができたことを、うれしく思います。それぞれの発表を紹介します。
○比嘉浩一
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演題:リフィル処方による患者本位の医薬分業に向けた薬局の取り組み
~「マイクロTDM」による定量的評価業務~
1)(株)薬正堂 すこやか薬局グループ 2)広島大学薬学部臨床薬物治療学
○比嘉浩一1)、比嘉朋子1)、石田浩1)、平良美和子1)、仲宗根春美1)、佐藤雅美1)、大津真央2)、毛利有貴2)、猪川和朗2)、森川則文2)
【目的】「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」の通達を通じ、患者中心の医療を実践する「チーム医療」を推進し、薬剤師の積極的な薬学的ケアを求めた。また、経済財政諮問会議では「リフィル処方の検討を含む、患者本位の医薬分業の実現に向けた薬局・薬剤師業務の推進」を示した。すなわち、保険薬局薬剤師が患者の変化を薬学的に評価し、副作用防止や受診勧奨を行い、良質な薬物治療効果を担保することを求めた。そこで我々は「マイクロTDM」を活用し血漿中薬物濃度、PT-INR、血清クレアチンの測定を行い薬剤師による積極的関与からリフィル処方への対応を試行したので報告する。
【方法】「マイクロTDM」とは簡便かつ低侵襲な自己採取法より得られた微量検体を用い薬効を示す値を測定、解析し、患者の薬物治療評価を適正に管理するシステムである。対象者は薬剤師による測定に同意した患者とし、指先自己穿刺により得られた血液を用いて測定を行った。症例1,2では、ワルファリン(WF)の有効性、安全性を評価するためにPT-INRを測定し、Time in Therapeutic Range (TTR)を指標として評価した。症例3では、血清クレアチニンを測定し、腎排泄型薬剤の処方支援を行った。症例4では、抗てんかん薬の薬物濃度の測定および解析を行った。各種測定機器は広島大学より貸与を受けた。
【結果】症例1:50歳代男性 PT-INRの変動が頻回な為、患者居宅へ訪問し、PT-INR測定を行った。PT-INR の結果を医師へ報告し、適切に薬剤の調整依頼を行った。症例2:70歳代男性 WFを服用するがPT-INRの変動が大きく、TTR48.5%と低い患者。薬局でPT-INR測定を行うことで、薬物治療の認識を高めTTR80%以上まで改善された。
症例3:90歳代女性 血清クレアチニンを測定しバラシクロビルの処方支援を行った。
症例4:70歳代男性 長期臥床のため服用量が増加し、副作用発現が危惧された在宅患者のバルプロ酸血中濃度を測定し、服薬支援を行った。
【考察】「マイクロTDM」を活用し、保険薬局店頭、在宅現場において薬剤物治療の定量的評価することで保険薬局薬剤師が継続的にモニタリングし客観的データを基に治療効果や副作用評価ができた。すなわち、本取り組みはリフィル処方への対応も可能であり、保険薬局薬剤師が医療の質の向上に寄与することを示すものと考える。
○比嘉朋子
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演題:「マイクロTDM」による保険薬局の定量的薬効評価の取り組み
~より簡便さを目指したdried blood spot(DBS)法の導入~
1)(株)薬正堂 すこやか薬局グループ 2)広島大学薬学部臨床薬物治療学
○比嘉朋子1)、比嘉浩一1)、石田浩1)、平良美和子1)、佐藤雅美1)、大津真央2)、毛利有貴2)、猪川和朗2)、森川則文2)
【目的】「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」の通達よりチーム医療の重要性が増し、保険薬局薬剤師による患者への積極的な薬学的ケアが期待されている。そこで我々は、広島大学臨床薬物治療学が考案した「マイクロTDM」を用い薬物血中濃度を測定することで、薬剤師による適切な服薬支援と患者評価を行ってきた。従来の「マイクロTDM」では、薬局等にて自己指先穿刺で採取された血液を、遠心分離後、血漿検体を分取し、凍結後に広島大学薬学部に輸送し、測定を行うため、器具や技術者が揃いにくい環境下での改善の余地を残した。そこで、今回、自己指先穿刺で採取された血液を直接ろ紙カードに滴下するdried blood spot(DBS)法の導入を試みた。今回、DBS法が治療評価に活用できうるかを従来法と比較検討した。
【方法】「マイクロTDM」とは簡便かつ低侵襲な自己採取法より得られた微量検体を用い薬効の指標となる値を測定・解析し、患者の薬物治療評価を適正に管理するシステムである。今回の対象者は薬剤師による薬物濃度測定に同意した患者とし、対象薬物を、抗てんかん薬の中でも使用頻度の高い、バルプロ酸Naとカルバマゼピンとした。対象患者による自己指先穿刺で得られた血液を、従来法とDBS法で採取し、血漿検体およびDBS検体を広島大学薬学部で測定した。DBS法で得られる値は、全血中薬物濃度であり、実際の薬効評価に用いる血漿中薬物濃度ではない。そのため、同一患者から得られた血液を2分割し異なる方法で測定した結果を評価した。
【結果】バルプロ酸Na服用患者5例とカルバマゼピン服用患者3例にて実施した。DBS法の導入により従来の「マイクロTDM」をさらに簡便化できた。バルプロ酸Naとカルバマゼピンのいずれも、従来の方法で採取した検体の血漿中薬物濃度とDBS法を用いて採取した検体の全血中薬物濃度間に相関が認められた。ただし、バルプロ酸NaではDBS法が血漿中薬物濃度よりも低く、カルバマゼピンではDBS法が血漿中薬物濃度よりも高い傾向になり、血球およびタンパク結合率の関与が示唆された。
【考察】「マイクロTDM」にDBS法を導入することで、従来より簡便に行うことができた。
今後も外来患者や在宅患者の有効かつ安全な薬物治療に貢献できるように症例を集積したい。
○當真彩、佐久川碧
當真彩、佐久川碧 学術大会に参加して
「今回初めての学術大会にて発表を行いました。先輩方に手厚い指導をいただいたお陰様で、自信を持って発表することができました。また、病院、調剤薬局、行政の方など様々な方々との交流ができとても貴重な体験となりました。発表の際に、「薬剤師と管理栄養士が連携することでどのような利益があったか」や「管理栄養士が在宅医療に関わると調剤報酬で点数が加算されるか」など数多くの貴重な質問を頂きました。
今後も薬剤師と管理栄養士が協力し、患者さんに大きな利益をもたらすことを示していきたいです。更に、このような活動が認められ、管理栄養士の仕事に調剤報酬算定といったfeeが付くことを願っています。」
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保険薬局が行う栄養サポート
~在宅訪問における管理栄養士との連携の有用性~
○當眞彩1) 佐久川碧1) 松堂歩1) 長濵早紀1) 古堅直也1) 砂川信子1) 石田浩1) 比嘉浩一1) 喜屋武芳美1) 佐藤雅美1)
1)(株)薬正堂すこやか薬局グループ
【目的】「患者のための薬局ビジョン」が策定され 患者本位の医薬分業の実現に向けて、医療機関や医療従事者との連携した在宅への対応が求められており、我々も在宅訪問を行っている。在宅訪問を行う中で、入院中は食事と栄養面を考慮された環境であるが退院後、患者や家族が食事に対して不安を感じている事が少なくない。そこで今回、管理栄養士と連携し患者のQOL維持とその家族の不安を解消する事例を経験したので報告する。
【方法】83歳男性 病歴:#慢性腎不全(高血圧性腎硬化症)腹膜透析中 #脳梗塞(心原性脳梗塞症疑い) #左失明、右角膜移植後(虹彩角膜内皮症候群) #高血圧 #高脂血症 #糖尿病 脳梗塞後遺症にて右麻痺、失語あり。患者家族(長女)の希望より在宅療養を開始された。一方で家族と訪問看護師の食事管理の不安より薬剤師訪問に管理栄養士が帯同した。
【結果】初回介入時、入院時の栄養量1日1800kcal、たんぱく質80g、塩分4gの治療食を3~10割摂取。飲水制限500ml/日。病院栄養士による退院時栄養指導実施済み。患者は厳格な塩分制限(3g/日程度か)により浮腫みは無いが食事を嫌がることがあった。そこで、まずは減塩しながらおいしく食べられる方法を指導し、調味料に含まれる塩分量、加工食品やメニュー用調味料の栄養成分値の確認についても指導した。介入1か月後に透析出口部感染のため抗生剤が投与され下痢、食欲不振、体重減少がみられた為、医師への報告し下痢改善後の栄養補給を行った。介入2か月後に長女へ食事メモを依頼し11日間の摂取栄養量の平均を推定した。推定量は1日平均1300kcal、たんぱく質52g、塩分量5.3g。むくみが長時間座位で足背部に出現。NT-proBNPが上昇傾向のため、塩分量は現行の5g/日未満を維持し、栄養バランスについて指導した。家族は患者の透析管理下における食の不安が解消され食事療法を前向きに捉えられるようになった。
【考察】栄養素の過不足は、代謝性疾患、循環器疾患の増悪、サルコペニアの亢進、生活自立度の低下、易感染性等の疾患や状態に影響する。病院や施設を出たあとも、栄養状態を適正に保つことが重要である。保険薬局の管理栄養士との連携で、服薬指導・管理だけでなく、食事・栄養の総合的な指導が迅速に対応できた。今後も地域のかかりつけ薬局を目指し、管理栄養士と連携を図り活動の幅を広げたい。